現代によみがえる昔ながらの健康法『養生訓』に学ぶ

養生訓

現代を生きる私たちは、過去に無いほど便利で快適な環境にいます。生活水準の向上、医療技術の進歩、公衆衛生等の社会保障は充実し、世界でも最高レベルです。

しかし超高齢社会を迎え、がんや脳血管障害、心疾患などの生活習慣病や日常のストレスからくる心の病など、深刻な健康問題と向き合っていかなければなりません。

テレビや雑誌、インターネットなどには健康に関する様々な情報が溢れ、どれを信じていいかわからない状態です。

そんな現代だからこそ、昔の人が言っていた言葉に耳を傾けましょう。

学ぶことがたくさんあります。

自分の生活を正し、自然に逆らうことなく、心の安定を保ちながら健康になる生き方を目指した先人たちの知恵は、近代化した今の時代によみがえります。

『養生訓』に学ぶ

江戸時代、貝原益軒が著した『養生訓』。

自分の体験に基づいた健康法を解説した書物で、当時の人々に広く愛読されたといいます。

古い書物ですが、読んでみるとこれが面白い!

例えば、

「貧しい人でも道に従って楽しんで一日を過ごしたら、大いなる幸せである」

「薬を飲まなくても治る病気があるのに、むやみに薬を飲んで病気をひどくすることがある」

「養生の道は、食欲・色欲を抑えることが根本」

「お酒は少し酔う程度で節度を越えず、食事も満腹の半ばが良い」

など、今でも通じる健康法が盛りだくさんです。

 

人の身体は天地・父母の恵みを受けた大切なもの

【養生訓】人の身は父母を本とし、天地を初とす。天地父母のめぐみをうけて生まれ、また養はれたるわが身なれば、わが私の物にあらず。父母の残せる身なれば、つ々しんでよく養ひて、そこなひやぶらず、天年を長くたもつべし。

私たちのからだは両親から授かり、天地(自然)をはじめとしています。

これは養生訓の一番初めに書かれていることです。

からだは自分だけのものではなく、天地の賜物であり、父母が残してくれたものだから、つつしんで養い、傷つけることなく天寿を全うしましょう。

「自分の体だから、どうしようと私の勝手だ!」と思いがちですが、それではいけませんよね。

天から授かり育てられた「賜物」です。

大切に扱いましょう。

健康を保つため、養生の術を学ぶことは「人生第一の大事」

【養生訓】養生の術をまなんで、よくわが身をたもつべし。これ人生第一の大事なり。・・・身命と私慾との軽重をよくおもんぱかりて、日々に一日を慎しみ、私慾の危をおそる々こと、深き淵にのぞむが如く、薄き氷をふむが如くならば、命ながくして、ついに殃(わざわい)なかるべし。豈(あに)、楽まざるべけんや。

養生の方法を学んで健康を保つことは、人生で一番大事だと書かれています。

「体が資本」といわれますが、体が健康でないと何もできませんよね。

欲におぼれて身を滅ぼし、命を失うことは愚かである。

私欲の危うさを恐れ、薄氷を踏むような思いで慎重に暮していれば、禍(わざわい)を免れる、とも言っています。

目の前にごちそうがあればつい欲は出るもの。

そこをグッとこらえて暴飲暴食は控えるべきなんですね。

健康で、人生を楽しみましょう!

 

健康で長生きするために大切なことを漢字一文字で表すと?

【養生訓】身をたもち生を養ふに、一字の至れる要訣あり。これを行へば生命を長くたもちて病なし。おやに孝あり、君に忠あり、家をたもち、身をたもつ。行なふとしてよろしからざる事なし。その一字なんぞや。畏の字これなり。

養生のために最も重要な漢字1文字、それは「」です。

「おそれる」と読みますが、

辞書には

「おそれる かしこまる」

「心服する、敬う」とあります。

「敬服する」という解釈が合うのではないでしょうか。

前段に、からだは自分だけのものではなく、天地の賜物であるから大切にしようと書かれていました。

天地・父母に対し、常に敬服する心を持つことが必要だと言っているのですね。

 

【養生訓】畏る々とは身を守る心法なり。ことごとに心を小にして気にまかせず、過なからんことを求め、つねに天道をおそれて、つ々しみしたがひ、人慾を畏れてつ々しみ忍ぶにあり。これ畏る々は、慎しみにおもむく初なり。畏るれば、つ々しみ生ず。畏れざれば、つ々しみなし。

成功した経営者、大企業の社長を始め、名のある戦国武将もみな共通して神社仏閣に通っていたそうです。

お願い事をしていたのではなく、自分の身体を授けてくれたことや全ての環境・大自然に感謝の気持ちを表していたのでしょう。

つまり「畏れ」の心を持っていたと考えられます。

畏れることは慎みに向かう出発点なんですね。